7月10日、ツーリング2日目、能代市内の米代川河口近くの公園で朝を迎えた。風力発電の高さ120メートルを超える巨大風車の下にテントを張ったが、寝苦しいこともなく熟睡し、スッキリ目覚めた。5時30分頃になるとウォーキングの人や犬を散歩する人が数名現れた。公園は海岸の堤防とつながっていて、堤防の上は遊歩道になっている。潮風を受けて朝の光を反射した海面を見ながらのウォーキングはなんと爽快なことか。これを日課にしている人が羨ましい。
さて私の方は、北海道に渡るフュリーの予約がネットでできなかったので、とりあえず青森港フェリー乗船窓口に急ぐことにする。テントを収納し、公園のトイレ脇の水道で顔を洗って6時15分に出発する。国道7号を北秋田市、大館市を通って青森県との境、矢立峠を越える。このあたりは山が深く昔は阿仁マタギのホームグランドだったのだろう。しかし今は国道も整備され、幹線を走るかぎりマタギと結びつくような集落は見当たらない。峠をトップギヤーで越えて青森県に入った。しばらく走ると遠くに岩木山が見えてきた。津軽富士と呼ばれるように単独峰で裾野がきれいに広がっている。つい「♫〜きっと帰ってくるんだと〜♫お岩木山で手を振れば‥」などと口ずさみたくなる。そんな弘前市を過ぎて青森市内に入った。

弘前市の郊外から望む岩木山
青森市街に入る手前で国道を北に折れ、10時30分にフェリーターミナルについた。早速、乗船窓口に行き、受付のメガネをかけた小太りの男性に「予約はしていないのですが‥」恐る恐るたずねると「次の便でいいですか。11時35分発になります。」「え! お願いします♪」1時間後に出港、ラッキーだ。時刻表を見ると津軽海峡フェリーと青函フェリーが交互に運行しているが、次の出港は青函フェリー「はやぶさ」だ。大人1人2000円、原付バイク2000円を支払い、乗船待機場所にカブを移動する。待機場所には、バイクが7〜8台、乗用車が20台ぐらい、トラック数台が乗船指示を待っている。待っている間、40歳ぐらいの男性が話しかけてきた「これから北海道を回るんですか? いいですねー」これをきっかけに彼と乗船まで話をした。彼は道内に住んでいるが、中古車を買って家に戻るところだという。本州の方が車種が多いので‥と言いながらジムニーのボンネットを手で撫でていた。彼とは北海道の交通事情を話した。「道内の速度取り締まり。以前は制限速度を20キロ以上オーバーしなければ捕まえなかったが、最近は10キロと少しでも捕まえるようになった‥」「自分はカブなのでそんなにスピードを出さないが、気をつけなければ。」そんな話をした。

青森フェリー埠頭 津軽海峡フェリーと青函フェリーが出ている

乗船待機場所。バイクは最初に乗船するのでこの後先頭に移動した。
フェリーは定刻の午前11時35分に出発した。函館港には約4時間後の午後3時25分に着く。航行中は、2等カーペット席では横になり北海道に思いを巡らし、また、津軽海峡の潮風にあたって右舷から下北半島を左舷からは津軽半島を眺めて過ごす。またここで「♫〜ごらんあれが竜飛岬北のはずれと‥♫」という歌詞が頭の中に夏の入道雲のように膨らんできた。一応言っておきますが、私は音痴でカラオケを強要されると冷や汗がでるタイプです。でもその時々の心情にあった歌を聴くのは好きです。北海道ツーリング中は土地土地でいろんな歌の歌詞が浮かび、口をパクパクしている自分がいた。

二等客室カーペットルーム この日は広い部屋に数名が雑魚寝
一方、右舷から眺める下北半島は、仏ヶ浦の切り立った断崖が白く見える。そこは観光船も出ている観光名所だが、ここフェリーから眺める仏ヶ浦は何か暗いイメージがある。それは、昔見た映画「飢餓海峡」が影響している。昭和40年制作、内田吐夢監督のこの映画は、のちの刑事ドラマにも大きな影響を与えた不朽の名作。出演・三國連太郎、伴淳三郎、左幸子、高倉健ほか。物語は、北海道の小さな町で起こった強盗殺人事件で始まる。犯人3名は質屋から奪った現金を手に本州への逃亡を図る。折しも津軽海峡では台風で青函連絡船「洞爺丸」が転覆し1,155名もの犠牲者を出す(ここは実話)。その混乱に乗じて犯人3人は奪った船で津軽海峡を渡る。しかし、下北半島の仏ヶ浦に着いたのは1人だけであった。洞爺丸の犠牲者の中に2人の身元不明の死体があった。事件の捜査線に浮かんだ3人の男を追う刑事(伴淳三郎)、しかし下北からの行方がつかめない。年月が過ぎ、犯人の1人は事業に成功し篤志家となっている。そして新たな事件が発生する。すでに定年になった元刑事に協力の依頼が来る‥少々長くなったが、この映画で津軽海峡と下北半島は重要な背景になっていたのを思い出した。旅をしていて映画やドラマの舞台になった場所に出会うと映画の一場面が現実のように浮かんで来る。このツーリングでは他にもあった。内容は後で述べるが富良野の麓郷だ。
名作「飢餓海峡」で津軽海峡、下北半島、仏ヶ浦は重要な背景になっていた

乗船待合所で会話した彼とカップラーメン自販機の前で再び会い、お互いニヤニヤ
船上での4時間は早く過ぎ函館山が見えてきた。いよいよ北海道に上陸だ。

函館山が見えてきた。いよいよ北海道上陸だ。
さて、今日のキャンプ地を決めて明るいうちに設営したい。
この続きは(その3)で‥