平成29年7月13日、ツーリング5日目。とままえ夕陽丘キャンプ場で朝を迎えた。晴れてはいるが薄い雲が空全体を覆っている。雨の心配はなさそうだ。隣のテントのハーレーを見送った後、私も8時に出発する。今日の予定は、最北端の宗谷岬まで北上した後、オホーツク海沿岸を南下し、時間をみて最寄りのキャンプ場を探すことにする。苫前からおよそ2時間でサロベツ原野の南端の町天塩町に着いた。ガソリンはまだ余裕あるが、これから行くサロベツ原野の真ん中でガス欠になると怖いので給油する。1.75リットルだけで恐縮しながら238円を支払い、ついでに道を確認する。スタンドの青年は、笑顔で対応してくれた。天塩町から稚内までは海沿いの道道106号を走った。天塩町を過ぎて人家のない荒涼とした原野を走っていると間もなく「オトンルイ風力発電所」現れた。約3㎞にわたって28機の風車が並ぶ光景はとてもシュールに感じる。

道道106号(グーグルマップのストリートビューから)

オトンルイ風力発電所 28機の風車が3キロメートル続く

地平線が見えるサロベツ原野

一方は日本海
私は、高校の時に実習で写真現像を体験してから写真が好きになり、写真展にも応募していた時期があった。しかし、デジタルカメラが一般化した頃から写真への興味が薄れ、当時月賦で買った高級フィルムカメラも眠ったまま、もう日の目は見ないだろう。多分その理由は、デジタルカメラになってから、撮る費用や撮った結果を見るまでの時間が格段に手軽になったことが逆に、フイルム一枚一枚に込めていた時の熱意を無くしたのだと思う。安月給の身にはシャッター一押し50円以上は大きかった。デジタルカメラのようにお金を気にせず何枚も撮り、すぐに結果を見て気に入ったものだけ残すことができる今とは格段に違う。また、デジタル処理によって本来写真が持つ一期一会のシャッターチャンスも揺らいできたと自分勝手に思ってきた。しかし、今回のツーリングでデジタルカメラの良さを再認識した。これまでデジタル処理を邪道だと思っていたが、撮影の意図がより伝わるのであればそれも手法の一つだと考えが変わった。
ここに、サロベツ原野で出会った一つの光景の3枚の写真がある。1枚目はそのままの色調で撮影し、2枚目は白黒で撮影したもの。私がその場で感じた無常観や非日常感を表すにはもっと何かが欲しいと考えた結果、デジタルカメラに付いている「ソリッドモノカラー」という機能を使い、白黒をベースに赤色系だけを強調することで、運のなかった子鹿を強調してみた。この3枚いかがでしょうか。

そのままの色調

白黒で撮影

白黒をベースにして赤色系を強調した
さて、サロベツ原野を走っていると何台かのバイクとすれ違ったが、いずれもすれ違いざま左手を上げて挨拶を交わす。中には少し手前から手を振るライダーもいた。このロケーションが生む高揚感を表しているようだ。ちなみに私に手を振ったライダーは女性だった。一瞬の出会いではもったいないなんてネ。
晴天であれば、利尻島や礼文島が見えるところだが灰色の雲が遮っている。ノシャップ岬の漁港に行ったが、魚貝の匂いの中で何隻かの漁船が係留されているだけで、島影は見えなかった。
正午近くに稚内市内に入った。セイコーマートで買ったドリンクで一服した後、約30分後に宗谷岬に着いた。バイク雑誌で何度も見たモニュメントの前で観光客は写真を撮っていた。それは他の観光地と変わりないように思える。でも、モニュメントの近くの歌碑から「♪流氷とけて 春風吹いて ハマナス咲いて カモメも啼いて 遥か沖ゆく 外国船の 煙もうれし 宗谷の岬‥♪(作詞:吉田弘 作曲:船村徹)」とダカーポの歌が途切れることなく聞こえてくる中で、それぞれが最北端の地に来たという思いを記録しているのだろう。土産物店や最北の地を強調した食堂の看板を眺めたあと再び走り始めた。ここからはオホーツク海沿岸の国道238号を南下する。

最北端の地のシンボルと間宮林蔵の像

道路の向かいには食堂があって、この地を目一杯にアッピール
岬から15分ぐらい走った時、海辺で地引網を引いている場面と出会った。小学生と父母たち40人ぐらいが歓声をあげている。網はほぼ引き終わっているが道路からは魚は見えない。一方では炭火でバーベキューの準備をしている。国道沿いには集落は見えなかったが、内陸の方には集落も学校もあって、何日も前から準備していた親子行事が今日なのだろう。そんな地元の日常を眺めて、また走り出す。

地元の小学生が地引網引きをしている光景に出会う
さて、午後2時にもなったので今日の宿泊地を決めなければと、マップでキャンプ地を探す。この国道238号沿いには、猿払村、浜頓別町、枝幸町といくつかのキャンプ場がある。その中から距離をみて枝幸町の「はまなす交流広場」に決めた。途中いつものようにセイコーマートで夕食を調達し、午後4時に目的地に着いた。そこは道の駅「マリーンアイランド岡島」の隣にあって、オートキャンプ場と芝生のキャンプ場の2つのエリアがあった。いずれも無料で炊事場やトイレを完備している。オートキャンプ場にはキャンピングカーが10台近くあったが、100メートルほど離れたキャンプ場でテントを張ったのは私だけであった。

広いキャンプ場にポツンと1張り

漁場から帰るのだろうか漁船一艘(キャンプ場から眺める)
夕暮れまで周辺を散策した。すぐ近くが海だが草が茂って波打ち際は見えない。空は、日が傾くにしたがいコバルト色から群青色に変わり、水平線はオレンジ色の濃さを増していった。あたりが薄暗くなり、近くの林から聞こえる鳥が啼く声が一層大きくなった頃にテントに入った。

今日の走行距離268キロメートル
この続きは(その7)で‥
/トップページ戻る/