五感で走った北海道(その8)

平成29年7月14日、ツーリング6日目の続き。
午後4時に斜里町のクリオネキャンプ場に着いた。そこは市街地から2キロメートルほど離れた畑の中、木造二階建の建物(ゲストハウス)を中心にバンガローのような建物が何棟か立っている。施設はライダーハウスとして、バイクや自転車ツーリストを相手の簡易宿泊所になっており、キャンプ場は敷地の一角にあって、ウッドデッキが備わっている。まず、受付のためゲストハウスの一階に行くと、ソファーやテーブルが雑然と置かれている。料金表が張られている玄関脇のカウンターが受付なのだろうが誰もいない。足元の段ボール箱にはカップラーメンやスナック菓子が入っている。値段が貼ってありので宿泊者に販売するのだろう。訪いを入れると奥から二十歳代前半の女性が出て、施設の簡単な説明と申込書を差し出した。それに書き込み、キャンプの料金300円を支払った。キャンプサイトに行くと先客は誰もおらず、一番端のウッドデッキにテントを設営した。ウッドデッキにテントを設営するのは初めての経験だったが、地面の状態に影響されないので、快適に眠れそうだ。

 キャンプ場はライダーハウスの一角にあった(クリオネのホームページから)

 ライダーハウス。一階がバイク置き場で、二階(ロフト)が雑魚寝部屋

テントを張り終えた頃、私より年長の男性が近くのウッドデッキにテントを張り始めた。70歳で大型バイクで一人旅をしているという。昨日は斜里岳に登った後にここのゲストハウスに泊まったが、相部屋で騒がしかったので今日はレンタルテントで寝るとのこと。ライダーハウスの利用者は若者が多いので深夜まで雑談が続く。そのためここでは50歳以上は個室かテント利用を薦めている。施設には温泉もあって、キャンパーも無料で入ることができる。混まないうちに入った方がいいよと1日先輩のキャンパーから教えられ、タオルを下げて牛舎のような作りの棟に入った。浴槽は3人も入るといっぱいの大きさで、自分で浴槽の蓋を取って入る。温泉とはいうものの蛇口二つで温度を調節するようになっているが、ちょうど良い湯加減であった。

 キャンプサイトはウッドデッキがあって快適だった。向こうに斜里岳を望む
湯から出てテントに戻る途中、バーベキュー設備がある東屋で二十歳前後の女性二人が楽しそうに炭火焼をしていたので、「今日は」とあいさつをした。彼女らはニコニコしながら一人が「これ、食べませんか?」と少しカタコトの日本語で話しかけてきた。何だろうと見ると焼き網の上でホッケの開き2、3枚をひっくり返している。煙を上げながら旨そうに焼けている。そして、発泡スチロールのトレーに乗せた半身と箸を差し出してきた。一度は遠慮したが更に勧めるので「それじゃ、少し」と入って、箸でつまんだ。焼きたてのホッケはとても旨かった。どこからの旅行か尋ねると、中国福建省出身の留学生で、本国から来た友人と二人で北海道を鉄道で旅行しているとのこと。友人の方は日本語を話せない。私も中国語で知っている言葉は「シェイシェイ・謝謝」と「プーヤオ・不要」のみ。昔、中国の観光地で土産物売りにしつこくされ、真っ先に「不要、謝謝」を覚えたきり。彼女たちに謝謝と言うと二人は笑みを浮かべてもっと食べろという。私の方からお返しするものは何もない。食料は途中のセイコーマートで買った弁当とレトルトカレーのみである。さらにホッケを2口、3口とつまみ、お礼を言ってテントに戻った。二人は話し足りない様子であったが、二十歳前後の女性である。ましては外人、シニアの私としては話題に窮する。その後、その二人は若者のバイカー何人かと楽しそうに夜遅くまで話していたのが、離れた私のテントにまで聞こえて来た。

 ライダーハウスには宿泊者のバイクが10台ほどあった。これもその一台。
 周囲が薄暗くなった頃からどこからともなく太鼓の音が響いてきた。ドンドンドン・ドドドドドン‥はて? 周囲は農地でまばらに住宅があるだけ、近くではなさそうだ。リズミカルで、心を煽るような太鼓の音は夜の9時ごろまで続いた。太鼓の音が止んだ頃、私も眠りに入ったが、それが何の太鼓か判ったのは翌日だった。観光ポスター「しれとこ斜里ねぷた」を見た時だった。7月22日、23日に開催されるねぷた祭りの練習の音だったのだ。キャンプ場は市街地から2キロメートルも離れているのだが、遮るものがない広い土地の星明かりの中を、太鼓の音だけが響いていたのだった。

 しれとこ斜里ねぷた(斜里町のホームページから)
さて、明日は知床半島を回ってどこまで行けるだろうか。この続きは(その9)で‥
/トップページ戻る/