平成29年7月16日、ツーリング8日目。足寄町の里見ヶ丘公園で朝を迎えた。朝7時にテントを撤収しようとしたところ、あれ! テントを張っているロープが切れている! 劣化だろうか? あれ! あれ! あれ! テントの4方向全部のロープが切れている。劣化でない。切られたのだ! 誰が? なぜ? 切り口をよく見ると毛羽立っている。ナイフで切ったものではない。犯人は公園を寝ぐらにするカラスであった。真夜中にテント(フライシート)の表面を何かが滑るような音がしたのは、カラスの羽音だったのだ。そして、テント収納袋が5メートル先にあったのも風でなく、カラスのイタズラだったのだ。夜中に起きた時は早く寝袋にもぐりこみたかったので、風で飛んだのだろうと自分を納得させたが、実は、風が吹いた様子はなかったのだ。朝、公園内を見ると、テントから20メートルぐらい離れた池の周囲に数羽のカラスがいる。カラスは好奇心が強く、いたずら好きである。見慣れぬテントを見て、4方向に伸びているロープを鋭い嘴でついばんだのだ。ロープの切り口が何よりの証拠である。

カラスに切られたロープ
カラスについては、今回こんなこともあった。北海道ツーリング2日目の苫小牧で目撃した光景。家畜飼料を運搬する専用車の荷台には円筒形のコンベアが付いているが、走っているその専用車の荷台に飛び降りて、餌を探しているのである。映画マッドマックスでは、走っているタンクローリーに人間が飛び乗って燃料を奪ったが、北海道では走っている飼料運搬車にカラスが飛び乗るのだった。

公園を寝ぐらにする三羽ガラス
さて、切れたロープは後で修繕するとして、荷物を積み込み午前8時に里見ヶ丘公園を出発した。今日は、前から行こうと決めていた富良野に向かう。足寄町から上士幌町を通り、北海道の分水嶺でもある狩勝峠を越えて南富良野町に入った。そこから北上すると富良野市だが、寄り道をして麓郷の森に向かった。そこは、テレビドラマ「北の国から」の舞台になった場所。今から35年も前のドラマだが、何度も再放送されているので知っている人も多いだろう。そこに行くと、純や蛍、黒板五郎に会えるとは思っていないが、舞台となった麓郷はどんな所なのか、そして、今でも残っているという当時の丸太小屋を一目見たかった。幹線道路から外れて農村風景の中を進んで行くと、旭岳や十勝岳の山並みを望む開拓農地と山裾の森林地帯が交わったところに麓郷の森があった。そこは観光地になっており、ドラマで黒板五郎が自分で建てた「丸太の家」「石で作った家」「廃品で作った家」がそれぞれ数キロ離れて建っていた。入場料各500円で見学できるが、どこも観光客がいて人気の高さがうかがえる。テレビ放映時には生まれていなかった若者も車で多く見学に来るのだろう、それぞれ近くには土産物店やカフェ等もある。そこから少し離れると、農協集荷場やそば屋がある通りがあって、その先は農地だ。このどこにでもあるような所であの純や蛍が成長したのだ‥と虚実混同し錯覚に陥ってしまいそうだ。しかし見方を変えると、どこにでもあるような所にもそれぞれのドラマがあるということかもしれない。
トウキビ畑の先が麓郷の森、純たちが初めて住んだ家がある(グーグルマップから)

「北の国から」は1981年から放映された人気シリーズ

麓郷の森には放送から35年経った今でも訪れる人が多い

麓郷の森には当時の家が残っている

丸太小屋が火事になった後、五郎が作った石の家
この日、北海道は大雨注意報が発令されており、麓郷の森から富良野市街に向かう途中は土砂降りの雨だった。所どころ側溝があふれ道路が川のようになっているところもあった。麓郷から約20キロメートル走って富良野市街に入っても雨は降り続いた。時刻は午後3時になるが、今日のキャンプは諦めて旅館かビジネスホテルに泊まることとする。まず、富良野駅前周辺ならあるだろうと、カブで駅周辺を一回りすると、商人宿風の旅館があった。濡れた雨具のまま、玄関で訪いを告げると、赤ん坊を抱いた男性が奥から出てきて「あいにく、今日はいっぱいで‥すみません。鈴木旅館さんなら空いていると思います」と教えてくれた。それではということで、少し離れた鈴木旅館を訪ねてみる。「すずき旅館」という看板が出ている6階建てのビジネスホテルのような旅館だった。駅近くという立地のためビジネスマンか個人旅行者が利用する旅館と思われる。フロントで訪いを入れると70代の女性(老夫婦で営んでいたことを後で知った)が出て、素泊まりでよければ二部屋空いているとのこと。大雨の中を走って来たので、すぐにでも落ち着きたかった。早速、チェックインする。カブの荷物を運ぶため、部屋まで3回往復する。カブにご苦労だったと心で呼びかけ、防水シートを被せ駐車場で休ませた。

今回のツーリングで初めて畳の上で寝た富良野駅近くの「すずき旅館」
部屋は畳部屋、1週間ぶりに畳の上で寝られると思うと早く横になりたいが、夕食(適当な食堂が見つからずスーパーで買った弁当・惣菜を部屋で食べた)までの一時、見知らぬ街を散策するのも旅の楽しみの一つ。傘とカメラを持って、珍しい店はないか? 変わった路地はないか? 周囲を眺めながら歩いていると‥ありました。電柱に大きな看板「へそ歓楽街」。富良野市は北海道の中心に位置することから「へそ」の町として、観光PRしていたのを思い出した。さっそく、へそを覗きに路地に足を踏み出す。と、そこには昭和の飲み屋が肩を寄せ合った路地があった。丁度雨も止んで、水溜りができた幅3メートルぐらいの狭い路地の両側に、「さくら」「マドンナ」「ラベンター」などスナック等では王道の名前が競っている。今はまだ早い時刻なのでカラオケやざわめきも聞こえないが、あと数時間もすると看板の輝きと共に路地も輝くのだろう。私はそうゆう店にはほとんど行かないが、昭和の雰囲気を残す路地はめっきり少なくなった。私の住む街にも「パナマ通り」というのがあったが今は見る影もない。2つの通りをつないでいた路地で、太平洋と大西洋をつなぐパナマ運河をもじったものらしい。二人並んで通るのがやっとの狭い路地にスナックが軒を並べていた。このへそ歓楽街は、まだ元気な様子。今でも中畑木材の地井武男と田中邦衛が肩を組んで、目の前の児島みゆきが勤めるスナックから出て来そうだ。この雰囲気をカメラに残そうとモノトーン調に赤を加えて撮影した。

この看板には誰でも興味をそそられる

へそ歓楽街は昭和を感じさせる路地にあった

昭和ノスタルジーを感じてもらえるだろうか?

酒に酔った五郎と中畑のおじさんに会えそうな気がした
そんな昭和ノスタルジーに浸って旅館に戻った。

さて、今日はゆっくり風呂に入って、畳の上で眠るぞー! 「へそ」の夢でも見そうだ(この続きはその11に続く)
本日の走行263キロメートル
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